旧い自動車の内装張替作業で意外と時間を取られるのが材料の選定作業です。
特にレストア作業の場合は下手な素材を使ってしまうと、その車の価値が
時には暴落してしまうので地味ですが重要な仕事です。
日本の旧車はもうほとんどと言っていいくらいに当時と同じ、もしくは
復刻で同じ生地というのはどのメーカーにもありません。
あるとすれば昔の生地が残っていたものかもしくはどこかのショップなどで
オリジナルを再現したものを作ったかです。
しかし、外国車は日本車と比べると信じられないくらい内装関係の
様々な部材が手に入ります。メルセデスも純正品として当時の生地を元にした
合皮が揃っていますし、ロールスロイスやベントレーなども当時のカラーコードで
同じ色の本革を生成する事が出来ます。
ただ厳密にはその年その年でロットが変わり完璧に色が合わない事などもあります。
そんな作業の中でも色味を少し変えたい、もしくは今より綺麗になれば良い、
しかしきっちりオリジナルのディテールは踏まえたい。
そんなご要望をいただく事があります。
パンチング加工のレザー(合皮)
そんな時にしっかり押さえておきたいディテールがパンチング加工
これは現在作業中のポルシェ911SCの純正シート。
本革で俗にいうカンカンレッドと呼ばれるもので
ポルシェ独特の赤身の強い発色です。
今回はもっと濃い赤に張り替えて欲しいというご要望。しかしオリジナルに
なるべく近いディテールでという事でシートセンターに使われているパンチング加工も
再現する事になりました。
ポルシェは独自ピッチ
これが純正ポルシェのパンチング↓
穴と穴の間隔が12mmくらい。
このピッチ、他の車と比べるとすごく広いです。そして穴の直径が小さいです。
このピッチは既製品の物にはまずありません。
またパンチングで穴が貫通しているタイプなのでエンボス加工の物とは違います。
こういった特殊加工は自分では行えないので、外注先でこのピッチがあるかどうか
探してもらいます。
ドンピシャが見つかりました↓
殆ど同じピッチです。
以前にポルシェのパンチングを加工したことがあったんでしょうか。
というわけで無事施行可能となったので、生地を発注してパンチングをしてもらい
入荷を待ちます。
一口にレストアと言ってもその内容は多岐にわたり、一つ一つの作業に
入る前の段階で時間がかかることが多いです。
もしご自身の車をレストアする際は内装材料の熟考をお勧めいたします!
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